Jitz. LIFESTYLE

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もうすぐ絶滅するというネットの市民性について

最近、「Google検索がおもしろくなくなった」という声を聞く。実際に当ブログのアクセス解析を見るかぎりでも、検索エンジンからは記事の趣旨と大きく異なるキーワードによる流入が主で、とてもじゃないが俺が頑張って書いてきた内容にマッチした人種を確実に呼び込めているとは到底いえない。所詮、「無料」であるとはそういうことなのだ。

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World Wide Webが生まれた頃は“性善説”を前提にして、ネット検索は単純にテキスト量の多いもの、特定のキーワード含有率が高く、より多くのリンクが張られた専門性の高い、更新され続けているサイトという単純なロジックによって導き出された。

 

しかし、ネットの普及によって市場参加者が爆発的に広がった結果、作為的に検索上位に表示させるためだけの手法が横行し、意味のないコンテンツが検索画面のシェアを奪い、死屍累々の無価値なサイトが検索上位を占めるようになった。それらを選別する目的で検索エンジンは200項目にも及ぶ“アルゴリズム”によって、性悪的に、そして合目的的にサイトを選別するようになった。

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経済学的には市場参加者が増えれば増えるだけ利便性が増すという、「ネットワーク効果」が働くとされるが、今のネットの状況を鑑みるに本当にそうなのだろうか。思慮深い教養人はそのような“開かれた場”を嫌い、むしろ閉じられた空間に引きこもってしまったようにも思われる。「すべてはフリー(無料)であるべきだ」として誕生した、“フリーミアム”なる経済圏に今、信頼性と価値はあるのだろうか。あらためて考えさせられる。

 

これは資本主義社会におけるテーゼなのだが、そもそも世の中にタダというものはない。タダに見えても、実は思わぬところで代価を払わせられているのがネットであり、今の世の中だ。自分は巧妙に「タダ」の上澄み分だけを享受してやろう、と思ってる人もいるかもしれないが、お金を払わずとも、それより貴重な「時間」や「情報」をしっかりと支払わされていることに気づくべきだろう。

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そもそも検索エンジンが好む専門性の高いサイトは、本当に役に立ち、おもしろいのだろうか。俺はそこにこそ疑義を提示したい。人間的魅力を考えたとき、ただ一つの物事に精通した人間よりも、たくさんの様々な引き出しをこそ持った人間の方が面白くはないだろうか。根本的にそのような前提に最初から立っていないコンピュータが返す機械的なクエリに、もともとの面白みがあったのだろうか。

 

おもしろいと感じる人や情報には二種類のおもしろさが存在する。一つは特定の要素を徹底的に深堀りした結果、常人には計り知ることのできない、究極に専門的で微分化された深い知識。そしてもう一つが特定の既知の要素に対して、違った要素を掛け合わせることによって、邂逅した要素同士の融合によって新奇の解釈をもたらす、横断的な新しい知識だ。

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日本人はとくに「知の巨人」といったような、仰々しい大層な形容詞を好むと云われるが、これは立花隆や佐藤優、松岡正剛といった知識人を見れば明らかだが、後者のケースであることが多い。

 

にも関わらず、Webの世界では前者の深い知識のみを希求することによって、後者の新たな知識の可能性を阻害しているのだ。もっとも最近の検索エンジンのロジックには“Auther”の権威性という要素も加味し、執筆者のバックグラウンドやネームバリューによって著しく評価を高めるのだが、これはあきらかに「フラット」だといわれていたネットの世界に階級制を導入したことの証左で、もはやネットにおける市民性はすでに消失したといえる。

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またテキストという情報資産から考えると、たしかに量は質を凌駕するのが世の真理だ。だからこそ、ひとつの尺度として評価する対象であることは納得ができる。だがしかし、他方で「質」を担保するものが執筆者であるAutherや、バックリンクといわれる参照数、そして専門性から一概に導き出し得るものだろうか。

 

逆に多方面に話題が四散しているものは価値が薄いと、本当にいえるのだろうか。俺にはどのような方向によってトピックが四散しているのか、隠された関連性を探るほうがよっぽどおもしろいものが見つかるように思える。なぜなら、その関連性こそがAutherの個性であり、Autherの人生のテーマでもあるのだから。今のGoogleに統制された世界には、たしかに「面白さ」は存在しないのだ。

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おそらく、今後AIの発達によって緻密に解析され、改善されてくるであろう分野といえる。もしかしたら近い将来、それまでに累積されたテキストの残滓から、自動的にAIがテキストやトピックを生成していくことだって起きるかもしれない。はたまたサイト特有の個性、つまり文体などをAIに組み込むことで、サイト自体にバーチャルな人格が生まれる可能性すらある。『攻殻機動隊』の世界が現実に迫っている。

 

しかし、結局のところは使う側のリテラシーも、最大限に問われるようになってくるはずだ。なにがおもしろくて、なにがおもしろくないのかはあくまで主観の問題で、ネットの世界が今以上に資本主義的な“市場の論理”を強めると、脳天気で下劣なエンタメか、短絡的で浅はかな、情弱相手の劣悪ヘイトものしかコンテンツがフォーカスされなくなる。

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だからこそネットを使う側の情報の扱い方や選別眼、見識というものがより一層求められるのだ。そして、情報を制する者が世界を制す。情報を適切に扱うためにも、たしかなものを見定める眼と、確固とした自らの世界観を持っておく必要がある。

 

そうしないと逆に、情報に飲み込まれるよ。

 

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