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神秘の力が宿る!禅の茶法

以前に『“禅”的ライフスタイルで取り戻す本当の生き方』という記事で、内観の手段として寝る前に温かいお茶を飲む時間を持つことの重要性を書いたことがある。それは俺自身が生活のなかで実践し続けていることで、禅の考え方にインスパイアされたもっとも効果の高いメソッドのひとつだ。今回はそんな内観としての茶法にフォーカスして論を進めていこう。

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茶は「引き算」の美学

「お茶」といえば、多くの方がもてなしの極意として認識されていることだろう。実際のところ、茶道は婦女子の嗜み、嫁入り修行というイメージは明治期以降に確立されたもので、それ以前は武家における富と権力の象徴、剣禅一致・茶禅一味の思想のもと自らの武芸の裏付けとしてお茶は嗜まれていた。またそれ以前のお茶は不老長寿の霊薬として扱われ、その薬効は神秘的なものゆえ高僧しか手にすることができなかったという。そもそもの起源は古代中国やインド神話にも登場し、お茶が政治的、呪術的にも重要な神聖なものであったことが理解できる。

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そんなお茶が何故に日本の武家と結びついたのか。その大きな要因として天下人となった織田信長が家臣への禄を、領地の割譲から物品による報奨に切り替えたことが大きいと言われている。増え続ける家臣団を養うには日本の国土は狭く限りがある。そこで“茶の湯”の世界を至上の嗜みとし、唐物を中心とした年代物の茶道具に一国一城にも匹敵する価値を付与した。そうすることで銘品を手にした大名たちは、最大のステータスと羨望の眼差しを得ることができた。しかし名だたる武者たちを惹きつけた最大の理由は、彼らが明日をも知れぬ命のやり取りの果てに見出した、“茶の湯”の寂びた世界観に照らされた日常の有難み、無常の美しさに心奪われたためではないだろうか。

 

茶を点てて飲むという行為は、きわめてシンプルだ。所作も、道具も、原料も極限までシンプルな分、ちょっとした変化によって違いが出る。茶葉に湯と水。茶釜、茶匙、茶筅、茶碗。そして、一畳強の空間と時間的ゆとり。必要なのはたったこれだけ。その日の体調やちょっとした感覚の違い、選ぶ道具の違いによって茶の味は千変万化に変化する。必要最小限のモノと空間によって、自分が表現する世界観を如何様にもクリエイトできるという意味でも、茶は「自分自身を映し出す鏡」なのだ。だからこそ茶は、執着や煩悩を切り離す“禅”の教えとも相性がいい。世俗的なものを削いでいった結果、残るのは感覚だけ。凡人であってもそんな境地に立つことができる身近なツールなのだ。

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茶葉には気を「開放する」茶と、気を「鎮める」茶の2つがある

万物は“気”で出来ていると考えるのが、漢方をはじめとする東洋医学の基礎だ。以前に龍とは気の象徴であると喝破した記事を書いたが、俺は気をコントロールするための手段として茶を愛飲している。茶にはリラクゼーション効果があるものと思われがちだが、実はそれだけでなくエネルギーを増幅させる類の茶種もある。2種類の茶葉をうまく活用することで、気の流れを制御し、自律神経を整えるのにも効果がある。それぞれ必要なときに適切な茶種を選ぶこと。永続的に摂取し続けるものだからこそ、飲料はライフスタイルの中心に据えたほうがいい。それではどのような性質の茶葉が、どのように“気”に働きかけるのだろうか。以下にまとめよう。

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気を鎮める茶種

緑茶(薄茶)、中国茶、紅茶、ジャスミン茶、烏龍茶、プーアル茶、カモミール、ラベンダーなど

【効果・効能】おもにアジア全域から中東地域で採れる茶種で鎮静効果が強いもの。陰陽五行では「陰」に属する性質。いわゆる発酵茶が多い。緑茶、烏龍茶など中国茶、紅茶は同じツバキ科のチャノキから採れ、6大茶に分類される。とくに緑茶はガンの予防に効くとされ、殺菌効果が高く血糖値を下げることが分かっている。

 

気を開放する茶種

緑茶(濃茶)、麦茶、ルイボスティー、マテ茶、コーン茶、ミント、ローズヒップ、ハイビスカスなど

【効果・効能】南米やアフリカ大陸などの第三世界で採れる茶種が多く、様々な栄養価を含んだもの。陰陽五行では「陽」に属する性質。生葉の成分をそのまま残したもの。痩せた土壌でも十分に育つ逞しい生命力を宿しており、ポリフェノールやカフェイン、タンニンを含むものが多い。消化器の働きを助け、利尿作用がある。

 

俺の場合、意外にも日本茶はあまり飲まない。何故かと問われるとなんとも説明しがたいが、どうも身体になじまないのだ。交感神経が働きやすい体質なので、気を鎮める働きを持つバタフライピーというタイ原産の青いハーブティーを常用しながら、寝る前にマテ茶を飲んで気を練るようにしている。バタフライピーはアントシアニンを多く含み、眼精疲労や動脈硬化に効くとされる神秘的な蝶豆花茶だ。基本的にバタフライピーは常温か冷やした状態で、マテ茶は夏であろうとも白湯(さゆ)で淹れたものを飲んでいる。飲茶は自分との対話でもあるので、飲んだときの身体的なインスピレーションによって常用する茶種を決めるのがいいだろう。

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モノに神性が宿る

茶道や茶の湯というと、所作や作法とともに茶道具を連想する方も多いだろう。何故に茶人は茶碗や茶筅など茶道具を過剰に神聖視するのか、茶の世界に疎い御仁は不思議に思われることだろう。しかし、こんな経験はないだろうか。料理は盛る器によって味わいが変わる、ということを。また、お酒を飲むにしてもグラスを変えることで味や喉ごしが変わったという経験はないだろうか。それは器による温度変化や口径による芳香の変化、視覚効果などの要因もあるのだが、器が味を大きく変える最大の理由は器に宿った気の働きによるものなのだ。

 

モノというのは色んな経緯を経て人の手に渡る。製造されたばかりのモノでも、作り手と売り手、実際に手に取った買い手がそれぞれにいて、それぞれの人の気を宿している。それが年代物の銘品ともなると幾人もの所有者の手へと渡り、使い手たちの思念までも乗せることになる。もちろん扱われ方次第で邪念が宿ることもあれば、正当に、大切に扱われれば扱われるほど器の中に上質な“気”が練られるのだ。だからこそ、良い気を宿したものは骨董市場でも驚くほどの高値で取引されることにもなる。茶人が道具を神聖視し大切にするのは、受け継いできた先人たちの思念、気の流れを断ち切ることがないようにしているためだ。自分の茶事専用器を手に入れよう。

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心に聖域を持とう

さて、ここまで茶事が持つ意味について書いてきた。では、何のために人は惰性ではなく意識的に茶を飲むようになったのか。喉を潤す、水分を補給するだけが目的ならば水でいいではないか。何千年という歴史のなかで古来より、人類が好んで茶を飲んできたのには理由がある。それは茶を飲むことで人は自分の心の裡に立ち返ることができるからだ。どんなに多忙な一日でも、茶を飲むひとときの時間はホッとした瞬間をあたえてくれるもの。どんなに疲れていても一杯のお茶によって、人はリフレッシュできる。多忙な現代人の心は必ずしも身体に留まることを知らない。つまり、茶は遊離した心を身体へと引き戻す、霊媒としての役割を持っているのだ。

 

こう云うこともできる。茶を飲むことで自分だけの結界を張ることができる。何人も踏み込むことのできない神聖不可侵な結界。様々なノイズに溢れ、モノに囲まれた現代社会。そんな呪縛を解き放ち、自分らしく、人間らしく生きるためにも、茶を習慣化して心に聖域を持とう。茶を飲むことで気を、活力を得よう。明日を生き抜くために。

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【参考書籍】

神様に愛される一杯の「お茶」習慣──人生が変わる二十一日間のメソッド

神様に愛される一杯の「お茶」習慣──人生が変わる二十一日間のメソッド

 
茶―利休と今をつなぐ (新潮新書)

茶―利休と今をつなぐ (新潮新書)

 
茶の本 (岩波文庫)

茶の本 (岩波文庫)