Jitz. LIFESTYLE

アートと武術と、ライフハックと。

批評術

“余白”の風景 〜ゲーリー・スナイダー『終わりなき山河』〜

某所にもとめられて書いた、約500文字の書評。 俺が単一の書籍について語ることは少なく、公開するのもまた乙なものだと思った。この詩集は俺の人生においてもマスターピースといえる重要なものなので、ひとりでも手にとってみてくださる方がいることを願う…

モノトーンに彩られた水墨画の世界と血生臭さの詩情 〜映画『SHADOW/影武者』〜

チャン・イーモウ監督最新作『SHADOW/影武者』を公開初日に観てきた。チャン・イーモウというと色彩の魔術師として、VFXを駆使した絢爛豪華な独自の世界観と武侠アクションというのがお約束なのだけれど、今作は「自分が本当に撮りたい物語と巡り合った」と…

焼き鳥巡礼 ~誰もがうなる店:横浜編~

このブログの中にあって、ひそかな人気企画となっている『焼き鳥』巡礼。ついに関西を飛び出し、横浜一の焼き鳥の名店と謳われる「里葉亭(りばてい)」に行ってきた。実は味わってみたい本命のお店が他にあったのだが、まずは当地でも随一といわれる由縁を…

作品集『Terayama(日本語版)』/森山大道

森山大道という日本を代表する写真家をご存知だろうか。ストリートフォトの大家であるウィリアム・クラインに触発され、極端に粒子の荒い「アレ・ブレ・ボケ」を強調した作風と独特の詩情によって、日本ならではの『私写真』という方向性を決定づけた現代写…

世の中は紛いもので溢れている

世の中は紛いもので溢れている。真実ではない、真実の皮を被った贋作たち。残念ながら、あんたが信じているものの大半は紛いものだ。食品、ブランド、芸術、身に付けた教養、感動で涙を流した本の著者、趣味で教わった習い事、無垢な信仰心を求める宗教、拝…

焼き鳥巡礼 ~誰にも教えたくない店:関西編②~

意外にも、以前に焼き鳥の俺的名店について書いた記事が好評だった。 あきらかにこのブログに訪れる客層とは異なる趣向ながら、驚くべき精読率を誇る記事となった。やはり「食」というのは、人類普遍の関心事なんだろうな。そんなわけで性懲りもなく、「焼き…

ガラパゴス化する日本のブラジリアン柔術

※ガラパゴス化(Galapagosization)・・・閉鎖された環境で特殊進化することである。日本で生まれたビジネス用語のひとつで、孤立した環境で「最適化」が著しく進行すると、エリア外との互換性を失い孤立して取り残されるだけでなく、外部から適応性と生存能…

“絶対風景”のパースペクティブ 〜映画『セメントの記憶』〜

これはひょっとすると、映画史に名を残す映像作品になるのではないか。そう予感せずにはいられない、すごい映画を観た。映画の題名は『セメントの記憶』。建設ラッシュに沸く中東レバノン・ベイルートを舞台に、地上32階建てのビルの建設現場に働くシリア移…

砕かれたリージョ・プラン ~三木谷浩史に理想はあるか?~

4月17日、ヴィッセル神戸のフアン・マヌエル・リージョが監督を解任された。ようやくJリーグが面白くなってきた矢先でのショッキングな事態に、いろいろ思うところはあったのだが、正直うまく言語化できないでいた。なぜ言語化できないでいたのか。それは稀…

写真集『永遠の宇宙 高野山』/永坂嘉光

人がこうしてなにかを書き、撮り、描くのは、いつか、どこかで誰かに届くことを前提にしているからだ。そして、その前提はインターネットの発展によって新たな空間が開かれた今、誰もが「知」にアクセスできる環境があってはじめて成立する。しかし、それ以…

自虐的な、余りに自虐的な…自己ベスト

実はこの記事で、ちょうど壱百記事目になる。これを読んでるあんたも縁起がいいね。文字数にして単行本で参冊分、約三年間の集大成だ。一見してなんの脈絡もないことを書き連ねているように思えるが、それなりに筋のとおった話材を提供しているつもりだ。一…

クロン・グレイシーにみる“武術”と“芸術”の関係

伝説の格闘家ヒクソン・グレイシーの息子、クロン・グレイシーが2月18日(月・現地時間)にUFCで鮮烈なデビューを飾った。試合時間たった2分06秒での一本勝ち。グレイシー柔術の基本に忠実なテイクダウンからバックテイク、そして伝家の宝刀チョークスリーパ…

音楽の喪失は何を意味するのか ~映画『ノーザン・ソウル』~

映画『ノーザン・ソウル』を観た。何それ?、と思ったあんたが正解。『ファースト・マン』でも『THE GUILTY/ギルティ』でもなく、『ノーザン・ソウル』だ! 『ノーザン・ソウル』予告編 単館系のカルト作品で日本初公開でありながら、数少ない上映館もわずか…

焼き鳥巡礼 ~誰にも教えたくない店:関西編~

他人には教えたくない店というのが、人それぞれにあると思う。何を隠そう、無類の“焼き鳥”マニアである俺にとってそれは当然のように「焼き鳥屋」だ。マニアと自称するくらいだから、名店と噂されるところは軒並み足を踏み入れてきた。とくに本拠にしている…

愛しさとせつなさとくだらなさと ~ちびまる子ちゃんの同時代性とアナーキズム~

ここ1ヶ月の間にもいろんなことが起きてすでに風化しつつあるけど、さくらももこが亡くなったことを受けて初めて彼女のエッセイを読んでみた。とりわけ彼女のファンでもなく、彼女の著作が好きなわけでもなく、はたまた同世代でもない俺がなにゆえ突如として…

写真鑑賞論⑥ ~GHOST DUBBING COMPLEX~

閑話休題、ひさびさの写真鑑賞論。前回は媒体論として展示の魅力について語った。 「メディアはメッセージである(The Midium is the message.)」と、情報を伝達するメディア自体が情報であることを喝破したのは英文学者マーシャル・マクルーハンだが、写真…

「喪われたもの」の社会学

これから、とりとめのない話をしようと思う。理由は単純で、社会学者・岸政彦の『断片的なものの社会学』という本に触発されたからだ。この本はある意味で衝撃的な内容であるわけだが、どういう本なのかを客観的に説明するのは難しい。本文にそのまま物語ら…

霊性と情熱のあいだ ~映画は『森』をどう描いたか~

久しぶりに映画を観た。数年前までは単館系の映画を中心によく観ていたのだが、最近はめっきり映像作品から刺激を受けることが少なくなり、映画館から足が遠のいていた。そんな折、河瀨直美の新作が上映されているという話を聞きつけネットで調べてみたら妙…

2018ロシア FIFAワールドカップ総括

総評 約1ヶ月の熱狂が終わった。波乱ずくめのグループステージから幕を開けた2018ワールドカップ(W杯)ロシア。しかし、決勝トーナメントは総合力に勝るチームの順当な勝ち上がりとなったように思う。最終的には俺流の地政学的分析で云うところの「ランドパ…

QUINTETを解読する分析グラップリング学

他ではけっして語られないディープな柔術ネタを、会員限定で配信中!↓ www.sandinista.xyz QUINTET、観てます? 往年のグレイシーハンターとして、国民的人気をほこった桜庭和志が新たに立ち上げたグラップリング・イベントQUINTET(クインテット)。紳士の国…

ワールドカップにみるモダンサッカーの展開

今回のサッカーワールドカップは間違いなく面白い。まだ5日目を経過したばかりだが優勝国の本命であるドイツの初戦が黒星だったり、ブラジル、ポルトガル、スペインなども精彩を欠きドロースタートだったりと、すでに波乱の様相を呈している。大会前から今大…

写真集『In the Shadow of the Pyramids』/Laura El Tantawy

写真集の愛好家には必ずといっていいほど直面する命題が存在する。それは、写真家自身のこだわりの結晶である写真集は単体の一冊でもそれなりの重量と質量であることがほとんどなのだが、好みのビジュアルのものを収集していく結果、とてつもない物理スペー…

一流写真家のInstagramでわかるアートの見方

写真の媒体論について、ちょうど違う記事で取り上げている最中なのだが今回はその番外編。今や写真を鑑賞することのできる媒体は展示や写真集など場所や物質の制限を超えた。それこそ、スマホやパソコンなどのデジタルデバイスによってネット上にアップロー…

「批評眼」を養う読書7冊

人が自分自身を語るとき、おのずと付いてまわるのが経歴や肩書きという副次情報だ。どのようなお仕事されているんですか?ご専門は何なのですか?もはやこのメタデータ抜きにして、初対面の人間とコミュニケーションを交わすことなどできやしない。ところが…

写真鑑賞論⑤ ~写真は語り、そして踊る~

久しぶりに写真鑑賞論の続きを書こう。今回から写真を鑑賞する上での媒体論に入っていく。まず言っておきたいことは、俺自身が写真集という媒体にとことん魅せられた人間だから、その他の鑑賞法についてどこまで語れるかわからんし、基本的な知識が欠如して…

駆け抜ける、二発の弾丸

過去に見た映画の中でもっとも印象的なオープニングだったのが、アンドリュー・ニコル監督作品『ロード・オブ・ウォー』だった。実在する武器商人の半生を描いた映画なんだが、その冒頭、製造されてから着弾するまでの“銃弾”の視点で兵器の一生を映像化して…

築地ワンダーランド ~選び抜く生き方~

マルクスによる資本論の冒頭は、次の一文からはじまる。 資本主義的生産様式が支配している社会の富は『商品の巨大な集積』として現れ、個々の商品はその富の要素形態として現れる これだけ世の中に良い商品や他にない製品が溢れている現代。これ以上、躍起…

写真集『Songbook』/Alec Soth

去年見た中でのベスト写真集は?と問われれば、迷いなく挙げる1冊がある。世間的に大変な評価を受けている時代の寵児による作品集ではあるのだけれど、<彼>について多くを知っているわけではないし俺は熱烈なファンでもない。むしろ<彼>が何を表現しようとし…

写真鑑賞論④ ~レンズが見つめる先~

そもそものアートとしての写真の定義から始めて(第1回)、写真芸術の読み解きの例示(第2回)、そして写真編集(第3回)について言及してきた写真鑑賞論の4回目。今回は表現形式としてのジャンルについて論を進めてみたいと思う。前回の写真編集も同様だが…

写真集『EUROMAIDAN』/Vladislav Krasnoshek and Sergiy Lebedynskyy

なるべく政治的な思想や意見は公な場で公言するつもりはないんだけど。思ったことはなるべく自身の心の裡に抱いたまま忖度する、そんなことを美徳とする日本人という民族に民主政治は可能なのだろうか。今回の衆院選の結果を総括する報道を見つつ、そんなこ…