Jitz. LIFESTYLE

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柔術にアイデンティティを注入せよ ~戦略的オンライントレーニングのすゝめ~

柔術に必要な、“闘魂”的な何か

元気ですかあー。

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柔術にはアイデンティティがある、といったら驚かれるだろうか。 

 

地球の裏側のブラジルで、グレイシー柔術が体系化されたのが半世紀前。もともと源流を同じくしながらも、使い手や環境によってその活用の目的は異なり、その目的に従属するべく技術も自然淘汰的に洗練され、独自の体系へと変貌を遂げる。これが流派の生まれるメカニズムだ。ブラジリアン柔術も半世紀という短い歴史の中で様々な体系が派生しようとしており、いまなお変遷し続けている。俺らはその進化の過程を目の当たりにしているのだ。

 

ここでいうアイデンティティとは、日本語で云うところの“理念”に相当するものだ。理念という語を辞書などで引くと以下のように説明されている。

【理念(りねん)】

    1.ものの原型として考えられる、不変の完全な存在。イデー。イデア。

    2.事業・計画などの根底にある根本的な考え方。

 

「根底にある根本的な考え方」という部分がとくに重要だ。今、あんたが習得している柔術は何のためのもので、どうなることが最終的な目的へと通ずるものなのか。柔術を習得することで、人生においてどのような意味と価値を付加してくれるのか。たんなる娯楽として、フィットネスとして楽しんでいるだけだとして崇高な意味を求めないにしても、何のために綿々と受け継がれてきた技術なのか、その出自を知っているのと知らないのでは大きな違いがある。

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生きてくうえで目的やゴールをイメージできない営みはあまりにも残酷で虚しい。そういった目的やゴールを定義し、進むべき方向性と現在位置を指し示してくれる羅針盤のようなものが“理念”だ。明確に言語化されておらずとも、どういった目的でどのようにして使うものかは思想として技術に現れるのだ。

 

そういう意味では以前の記事でも触れたエリオ・グレイシーによる「私の柔術は、体重の軽い者が重い者に勝つために作ったものであり、力の弱い者が、強い者から身を護るためのものだ」という言葉は源流となる理念そのものであるし、このセルフディフェンスの思想性がみごとに結実したのが柔術におけるガードポジションといえる。

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エリオの時代から鑑みても、現代の柔術が果たすべき役割や環境は大きく変わった。そういった時代の変化にあわせ流派が派生するのは自然の摂理で、柔術が今を生きる“活きた”技術であることの証左でもある。格闘技クラスタの方でこのブログをお読みになられている諸氏はおなじみのこのチャートも、そういったアイデンティティ別に色分けをするとこうなる。

 

<系統図>

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 ↓

<アイデンティティ別マッピング>

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ここでも例の如く、厳密な分類や定義はご容赦願いたい。あくまで主観である。簡単にここでの分類を説明してみよう。先に触れたエリオ直系のセルフディフェンスを体現しているのが一番左、緑で網掛けした部分でいわゆる正統派「グレイシー柔術」に属する流派だ。そのとなり、ピンクで網掛けされたのがホーウス・グレイシーに端を発するモダンな「競技柔術」に重きを置いた流派でシーンにおける最大勢力といっていい。

 

橙色に網掛けされたのはグレイシー一族最強の男として名を馳せたヒクソンの一派で、セルフディフェンスを踏襲しつつも柔術に武道的な精神性と独自解釈のディテールを持ち込んだ、いわば「ハイブリッド型柔術」といえるもの。彼の門下ではインビジブル柔術(見えない柔術)というネーミングを標榜している。最後は一番右、緑で網掛けされたのがブラジル本国では本流のグレイシー柔術とされるカーウソンから派生した一派で、「バーリトゥード(異種格闘技戦)」を前提にした技術体系になっている。

 

で、本題はここから。俺らはブラジルからアメリカ、そして世界へとこうして広められたJiu-Jitsuの恩恵を享受し日々謳歌している。YouTubeなどネットを見ても実に様々な技術に触れることができる。しかし、だ。先述したとおり柔術には多様な流派が存在していて、そこには固有の思想が根ざしている。日本におけるブラジリアン柔術は残念ながら技術面ばかりがとめどなく輸入され、Jiu-Jitsuの思想性やその流派の背景といった哲学的な部分がおざなりになってしまっているのが実態なのだ。云うなれば日本のBJJは、あらゆる技を継ぎ接ぎして一貫性のないスタイルになっていしまっているのではないか。

 

そこでご自身の柔術にアイデンティティをインストールしてみてはいかがだろうか、というのがこの記事の趣旨だ。今、あんたが習得しようとしている技術は最終的にどんな局面の中で、どのように使うことを想定したものになっているのか。どのようなポジションを重視しているのか。まずは、ここをはっきりとさせることで身につけるべき技術も取捨選択できる。取捨選択した結果、残った技術が体系を為して柔術の中でやるべきこと、やらざるべきことの指針が見えてくる。そうすることで取り組むべきスタイルの輪郭が自ずとはっきりしてくる。そこに哲学(アイデンティティ)が宿るのだ。

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アイデンティティを注入するのにもっとも適した方法は、その流派のオリジネイターからプライベートでレッスンを受けることだ。つまり本国ブラジルや先進国アメリカで指導しているマスターから直接教えを請うのだ。しかし、多くの愛好家には金銭面と時間という制約が存在する。海外へ渡航するだけのまとまった時間を捻出することもハードルが高いが、1時間あたり500ドル前後ともいわれる名うてのマスターやプロフェッサーたちのレッスン料を惜しみなく支払うだけの経済的余裕をお持ちの御仁も稀であろう。

 

そこで現実味のある方法として有効になってくるのが、「オンライントレーニング」という手段である。教則DVDを購入するという手もあるが、広範な柔術の技術体系を幅広くカバーしてくれるものは皆無に等しく、時間的な制限のあるDVDというパッケージでは断片的にある局面の技にしかアクセスすることができないうえ、細かなディテールが伝わりにくいので体系立てて習得することができない。その点、オンライントレーニングの多くは月額課金制になっているため、ひとつの技も惜しみなくディテールを披露してくれることが多く、どういった局面でどのような技を選択し、どのように次の技に繋げるべきかという体系全体が理解できるはずだ。

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もちろん海外のオンライントレーニングを活用するには、ヒアリングなど言語的な懸念がある。しかし、こと柔術というシーンの中で使われる単語数はしれているし、多くがブラジルにルーツを持つインストラクターであるために使用されているのも第二言語としての英語が殆どだ。ネイティブとは違い、ゆったりした発音なので比較的聴きとりやすく語学学習にもちょうどいい場合が多い。また言語が理解できないとしても、結局はムーブ(動作)によってインストラクションされるので、基本は見たら解る範疇であろう。

 

それでは前掲のチャートをもとに、各流派の代表的な指導者とオンライン・カリキュラムを紹介してみる。何度も申し上げていることだが、ここでの分類や解釈はあくまで主観に基づくものなのでご留意されたし。

 

競技柔術

 

モダンスタイルを確立した革命的パイオニア

ART OF JIU JITSU

天才柔術家のハファエルとギィレルメによるメンデス兄弟が主宰するアカデミーで、『ベリンボロ』など理詰めの最新鋭テクニックで柔術史に新風を吹き込んだ。今なお2人の探究心は旺盛なようで、日々新たな技を開発し続け、現在もモダン柔術を更新し続けている。

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斬新なアイディアから奇抜な技を繰り出す異端児

Keenan Cornelius

かつてはメンデス兄弟も師事していたアンドレ・ガウヴァオン率いるATOSでひときわ異彩を放っているのがキーナン・コーネリアスだ。従来のラペラを新たな解釈によって光をあて、独自に体系化した『ワームガード』などで知られる柔術界のトップランナーの一人だ。

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わずか5年で世界王者に昇りつめた柔術レジェンド

Cobrinha Online

ムンジアル優勝6回、ADCC王者に3度輝く柔術界の鉄人フーベンス・“コブリンヤ”・シャーレス。かのフェルナンド・テレレから薫陶を受けたコブリンヤはなんといっても変幻自在のガードワークが特長で、未だ進化を続ける彼の体系を惜しみなく学ぶことができる。

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数多の世界チャンピオンを生み出した競技柔術の総本山

Gracie Barra

ちなみに拙者も在籍させていただいているグレイシーバッハは、その育成プログラムをアプリで学習することができる。マーシオ・フェイトーザ、ブラウリオ・エスティマ、ホムロ・バハウなど名だたる王者を輩出した秘訣が公開されており、一切の出し惜しみがなく懐が深い。

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Gracie Barra BJJ

Gracie Barra BJJ

  • Mobile Black Belt LLC (CA)
  • スポーツ
  • 無料

 

 総合格闘技としての柔術

 

MMA人気のアメリカで絶大な信頼を集めるカリスマ

Renzo Gracie

“最凶のグレイシー”として日本でも知られた存在であるヘンゾ、実は一族の中でも早くからMMA(総合格闘技)の進化を見越し、柔術にレスリングやサンボ、ボクシングなどの要素を先進的に取り入れた稀代の戦略家でもある。今、米国でもっとも厚い信頼を寄せられている指導者だ。

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クラシカルなグレイシー柔術

 

ブライアン・オルテガをつくり上げた究極の護身メソッド

Gracie Univercity

エリオの長男、ホリオンが米国で興したアカデミー。現在はその息子であるヒーロンとヘナーが引き継いでいる。いまだ謎が多いとされるエリオ直系グレイシー柔術の、シンプルな術理の中に秘められた応用性と実用性を、誰もが無理なく習得できる独自の学習体系が魅力。

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モダンスタイルを駆逐するオールドスクール柔術

Roger Gracie

グレイシー一族にあって、ヘビー級の恵まれた体躯と卓越した技術で柔術のみならずMMAやグラップリングでも圧倒的な強さを誇ったホジャー。競技柔術にクラシカルな技を持ち込み、グレイシー柔術の有効性を立証した。そんな彼の、実践的なディテールは必見だ。 

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武道としての柔術

 

セルフディフェンスの思想性を重視した一族最強の男

Rickson Gracie's Self Deffense Unit

後にも先にも彼を超えるグレイシーは現れないと断言できる、レジェンドの中のレジェンド。柔術の本質にこだわり、極限までファンダメンタルを磨き上げ、表層では理解することのできないディテール(細部)にその真髄を宿した独自の体系“インビジブル柔術”をつくり上げた。

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まとめ

以上、ここで紹介しているのはあくまでごく一部だ。ご自身のやりたい方向性やスタイル、技との相性などをよく吟味したうえで、最適なオンライン・プログラムを選択するべきだろう。

 

それでは、実り多き柔術ライフを!

 

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