Jitz. LIFESTYLE

アートと柔術と、ライフハックと。

批評

愛しさとせつなさとくだらなさと ~ちびまる子ちゃんの同時代性とアナーキズム~

ここ1ヶ月の間にもいろんなことが起きてすでに風化しつつあるけど、さくらももこが亡くなったことを受けて初めて彼女のエッセイを読んでみた。とりわけ彼女のファンでもなく、彼女の著作が好きなわけでもなく、はたまた同世代でもない俺がなにゆえ突如として…

写真鑑賞論⑥ ~GHOST DUBBING COMPLEX~

閑話休題、ひさびさの写真鑑賞論。前回は媒体論として展示の魅力について語った。 「メディアはメッセージである(The Midium is the message.)」と、情報を伝達するメディア自体が情報であることを喝破したのは英文学者マーシャル・マクルーハンだが、写真…

「喪われたもの」の社会学

これから、とりとめのない話をしようと思う。理由は単純で、社会学者・岸政彦の『断片的なものの社会学』という本に触発されたからだ。この本はある意味で衝撃的な内容であるわけだが、どういう本なのかを客観的に説明するのは難しい。本文にそのまま物語ら…

霊性と情熱のあいだ ~映画は『森』をどう描いたか~

久しぶりに映画を観た。数年前までは単館系の映画を中心によく観ていたのだが、最近はめっきり映像作品から刺激を受けることが少なくなり、映画館から足が遠のいていた。そんな折、河瀨直美の新作が上映されているという話を聞きつけネットで調べてみたら妙…

2018ロシア FIFAワールドカップ総括

総評 約1ヶ月の熱狂が終わった。波乱ずくめのグループステージから幕を開けた2018ワールドカップ(W杯)ロシア。しかし、決勝トーナメントは総合力に勝るチームの順当な勝ち上がりとなったように思う。最終的には俺流の地政学的分析で云うところの「ランドパ…

QUINTETを解読する分析グラップリング学

QUINTET、観てます? 往年のグレイシーハンターとして、国民的人気をほこった桜庭和志が新たに立ち上げたグラップリング・イベントQUINTET(クインテット)。紳士の国・イギリスの人気格闘イベントPOLARISから最強グラップラー陣が集結し優勝を飾ったQUINTET.1…

ワールドカップにみるモダンサッカーの展開

今回のサッカーワールドカップは間違いなく面白い。まだ5日目を経過したばかりだが優勝国の本命であるドイツの初戦が黒星だったり、ブラジル、ポルトガル、スペインなども精彩を欠きドロースタートだったりと、すでに波乱の様相を呈している。大会前から今大…

写真集『In the Shadow of the Pyramids』/Laura El Tantawy

写真集の愛好家には必ずといっていいほど直面する命題が存在する。それは、写真家自身のこだわりの結晶である写真集は単体の一冊でもそれなりの重量と質量であることがほとんどなのだが、好みのビジュアルのものを収集していく結果、とてつもない物理スペー…

一流写真家のInstagramでわかるアートの見方

写真の媒体論について、ちょうど違う記事で取り上げている最中なのだが今回はその番外編。今や写真を鑑賞することのできる媒体は展示や写真集など場所や物質の制限を超えた。それこそ、スマホやパソコンなどのデジタルデバイスによってネット上にアップロー…

「批評眼」を養う読書7冊

人が自分自身を語るとき、おのずと付いてまわるのが経歴や肩書きという副次情報だ。どのようなお仕事されているんですか?ご専門は何なのですか?もはやこのメタデータ抜きにして、初対面の人間とコミュニケーションを交わすことなどできやしない。ところが…

写真鑑賞論⑤ ~写真は語り、そして踊る~

久しぶりに写真鑑賞論の続きを書こう。今回から写真を鑑賞する上での媒体論に入っていく。まず言っておきたいことは、俺自身が写真集という媒体にとことん魅せられた人間だから、その他の鑑賞法についてどこまで語れるかわからんし、基本的な知識が欠如して…

擬人化された二発の弾丸

過去に見た映画の中でもっとも印象的なオープニングだったのが、アンドリュー・ニコル監督作品『ロード・オブ・ウォー』だった。実在する武器商人の半生を描いた映画なんだが、その冒頭、製造されてから着弾するまでの“銃弾”の視点で兵器の一生を映像化して…

築地ワンダーランド ~選び抜く生き方~

マルクスによる資本論の冒頭は、次のような一節からはじまる。 資本主義的生産様式が支配している社会の富は『商品の巨大な集積』として現れ、個々の商品はその富の要素形態として現れる これだけ世の中に良い商品や他にない製品が溢れている現代。これ以上…

写真集『Songbook』/Alec Soth

去年見た中でのベスト写真集は?と問われれば、迷いなく挙げる1冊がある。世間的に大変な評価を受けている時代の寵児による作品集ではあるのだけれど、<彼>について多くを知っているわけではないし俺は熱烈なファンでもない。むしろ<彼>が何を表現しようとし…

写真鑑賞論④ ~レンズが見つめる先~

そもそものアートとしての写真の定義から始めて(第1回)、写真芸術の読み解きの例示(第2回)、そして写真編集(第3回)について言及してきた写真鑑賞論の4回目。今回は表現形式としてのジャンルについて論を進めてみたいと思う。前回の写真編集も同様だが…

写真集『EUROMAIDAN』/Vladislav Krasnoshek and Sergiy Lebedynskyy

なるべく政治的な思想や意見は公な場で公言するつもりはないんだけど。思ったことはなるべく自身の心の裡に抱いたまま忖度する、そんなことを美徳とする日本人という民族に民主政治は可能なのだろうか。今回の衆院選の結果を総括する報道を見つつ、そんなこ…

写真集『After the Firebird』/Ekaterina Vasilyeva

久々に写真集を買ってしまったぜよ…。かつては物質の亡者だった俺が“所有”の解体と題して、物欲のおもむくままに買い集めてモノを貯め込むことをやめたのだが。いやあ、やっぱり魅惑的な視覚体験への誘いに抗うことはできず。そもそもが、いわゆる「ダミーブ…

写真鑑賞論③ 〜アートのカタチ〜

脱線ばっかで、ひさかたぶりとなる写真鑑賞論の第三弾。被写体の向こう側に透けて見える写真家の視点や観念、思想に着目せよというのが前回の記事での論旨だったんだけど。こむずかしいこと言ってるようで、実は。こむずかしく考えないように、ただ目の前の…

今こそ日本語ラップは夜明けに還れ

約20年にわたって、その偉大すぎる背中を追い続けている孤高のサウンドクリエイター、DJ KRUSHがソロ活動25周年の節目にニューアルバムを発表した。11年の時を経て発表された昨年の『BUTTERFLY EFFECT』から矢継ぎ早のリリースとなった今作は自身初となるラ…

写真鑑賞論② 〜被写体の向こう側〜

前回の続き。じゃあ、どういう写真が「アート(表現)」といえるのか。その具体的な例示と読み解きをしてみようと思うんだわ。 www.sandinista.xyz ここに1枚の写真がある。まずはなんの先入観も持たずに眺めてみてほしい。 1970年代にアメリカで興った「ニ…

写真鑑賞論① 〜それはアートではない!〜

「写真」との関わりはこれまでの記事で幾度か挙げてきた。写真というメディアの可能性、面白さというのは現存する芸術分野の中でも際立ったものでありながら、その魅力を十全に感じるには絵画や舞台芸術と同様に鑑賞者側にある程度のリテラシーとインテリジ…

かぎりなき仄暗さの臨界 -映画『神々のたそがれ』-

「すべてが初めて見る画面という、異形の映画。ストーリーはゆったりと進むものの、画面上に写っている情報量は半端ない。絶え間なく隅々まで、あらゆることがひたすら同時に起こり、3時間、みっちり埋め尽くすカオス。」と、映画系女子こと真魚八重子も激賞…